米国での建築設計実務の進み方2011.01.14 [COLUMNS,お役立ち情報]

 

様々な建築設計プロジェクトの進め方があると思いますが、私の経験の例を幾つか挙げながら米国での建築設計実務の流れをプロジェクトマネージャーの実務として記してみたいと思います。

 

 

米国での建築プロジェクトマネージャー

 

米国ではプロジェクトマネージャー(PM)が中心となって建築プロジェクトを進めます。PMはそのプロジェクトを成功させるためにスケジュール・コスト管理・チーム編成・全ての交渉の責任、その他プロジェクトに関わる一切の事を面倒見ます。建築家は設計事務所内ですらPMの下に属して機能する事になります。PMとプロジェクトアーキテクト(PA)の役割分担が明確に分かれて機能しているかどうかとPMの実力がプロジェクトの成功の鍵です。PMには勿論、豊かな経験が必要だと思いますが、高度機能を求められる現代建築状況を踏まえると人間の短い一生のうちに全ての知識を身につける事は殆ど不可能に近いのではないでしょうか。それよりもPMにとって大事なのは彼・彼女自身の人格や人望、コミュニケーション能力などが大事なのではと思います。あるプロジェクトのPMは20代で私よりも年下でしたが、彼には誰よりも熱意がありそして精神的にいつもポジティブ、何よりもどんな人にも好かれます。これが彼の最大の魅力です。チームの一員として彼を見ていてこれがPMにとって一番の資質ではないかと思いました。チームには年配で経験豊かなメンバーもいますし社外の構造設計事務所・設備事務所・クライアント・様々なコンサルタントにはもっと手強い相手がいます。それでもプロジェクトに関わる皆がPMに好感を持てれば一致協力して同じゴールを目指す事ができるのではないでしょうか。私自身は現在、建築設計チームの一員として米国で働いていますがいつか素晴らしいPMを目指して自分自身を磨いていきたいと思います。

 

 

 

プロジェクトの段階

 

 

プレデザイン及びマーケティングデザイン (PREDESIGN, MARKETING)

 

将来のお客様・建主(個人、法人、ディベロッパーなど)から依頼された条件やご希望を元に敷地でどのような建築物が構想できるか大胆かつ夢が膨らむような提案を目指します。建築家としては図面等だけでなくお客様に分かりやすくイメージレンダリングやプレゼンテーションボードなどでお互いの夢を共有できるように心がけます。商業施設やホテルなどのホスピタリティー施設を依頼される法人・ディベロッパーであれば必ず、クライアント側に専門のコンサルタントを抱えている事が多いので彼らとのコーディネーションも大事です。

 

 

スキマティックデザイン (SCHEMATIC DESIGN,  SD)

 

基本構想設計と基本設計の中間段階の設計というのが日本ではあてはまるでしょうか。日本でも同じですが、基本構想段階とはいえ、ある程度の建築的な詳細も抑える必要がありますし、設計図書として建主に提出します。勿論、但し書きとして変更の可能性があるということを明記しときます。基本的にアーキテクトはAIAの定めるガイドラインに沿って仕事を進めますのでどの段階でも仕事がホールドになったりキャンセルになったとしてもきちんと履行した仕事や成果物に対して依頼主に対して請求できるようにします。日本では在り得ないと思いますがコピー・プリント・ファックスの一枚一枚まで単価を決めてクライアントに請求することが多いです。打ち合わせ等で出向く場合も1マイルにつき何セントの経費・電話も長距離等で費用がかさむ場合も請求します。日本では基本設計や基本構想段階であれば厳しい競争の中でサービスになりがちですが、米国ではアーキテクトがきちんと請求できるシステムになっていると同時にプロジェクトが本格的に始動する前にあらゆることを細かく建主や協力会社と取り決めておかないと直ぐに訴訟問題に発展します。そして万が一問題が起きた時のためにプロジェクトチームに対して保険も加入することも多いです。

 

 

デザインディベロップメント (DESIGN DEVELOPMENT, DD)

 

デザイン・ディベロップメント(DD)は日本においては基本設計に実施設計の初期段階を足したような段階の内容です。目的としてはスキマティック・デザインで構想した計画を概略で積算できるように発展させると同時に実施設計で変更が発生しない様にするためにデザインを最終的に決定することを目標としています。

 

 

コンストラクションドキュメント (CONSTRUCTION DOCUMENT, CD)

 

実施設計の事をいいます。プロジェクトによっては30%、50%、80%そして最終設計図書として100%のCDを段階的にクライアント・オーナーやコンストラクションマネージメント会社(CM)に提出してバリューエンジニアリング(Value Engineering, VE)の検討材料にしたり、設計料を段階的に頂くために行うことが多いです。一方で70-80%終了段階にGMP(Guaranteed Maximum Price)セットを作成し最終的に仕様及びコストを決定します。GMPセットはパーミット(Permit)セットを兼ねて役所申請に使うことも多く、また鉄骨等の資材やインテリアの機器等はGMPセットを元にあらかじめ発注するので、それ以降の設計仕様変更はコントラクターが(ここぞとばかりに)大幅に価格を上乗せしてきます。GMPセットが事実上のヤマ場なので以降は設計図書の完成度を高めて100%の実施設計図書を作成します。プロジェクトによって設計期間は様々ですがGMPセット以降は約4-6週間で仕上げます。 

 

 

コンストラクションアドミニストレーション (CONSTRUCTION ADMINISTRATION, CA)

 

コンストラクション・アドミニストレーション(CA)は設計監理のことをいいます。私の経験を元に記します。基本的に日本での監理業務を同じだと思いますが、施工業者の工事をクライアントを代理して設計図書通りに施工されているか監理し、施工図(ショップドローイング、Shop Drawing)などを認証します。
パンチリスト(Punch List)という施工改善要望書を作成し施工業者に施工のやり直し、改善、補修などを指示します。

 

 

 

その他

 

 

BRA(Boston Redevelopment Authority)との交渉

 

BRAとはボストンにおける開発を監督する団体で、日本の建築行政の都市計画課、建築指導課など建築関連部門と歴史保存協会などが一緒になったような組織です。法規をチェックするのみでなく景観的な配慮、既存都市への影響の検討などを主観的にBRAの担当チームが徹底的に意見を出し指導をします。最近のBRAには保守的な考え方を持たれている方だけではなく、新しいもの・今までとは違ったものを受け入れてくれる方も増えてきているようです。